Ⅱ.市場規模分析
国内のサッカースパイク市場がこの先大きく拡大されることはないであろうと考える。なぜなら、国内の人口自体が大きく減少していくからである。図5のグラフから見て取れるように、平成24年度から人口が増加することはなく、平成87年度(2075年)からは大きく減少していることがわかる。この人口減少はサッカーを頻繁にプレーし、サッカースパイクを購入する機会が多いであろう年少人口や生産年齢人口から始まっていく為、今後何らかの少子高齢化対策が功を奏さない限り国内のサッカースパイク市場は伸び悩むと考えた。ただし一方で近年ではサッカー日本代表の躍進もあり、サッカーの競技人口は増加している。第一種と呼ばれる社会人の競技者こそ減少傾向にあるものの、プレー頻度が多くサッカースパイクを多く消費しやすい第二種、第三種、第四種といった若年層のサッカー競技者は年々増加しているのだ。さらに、スポーツ用品やサッカー用品の国内市場は近年だけでいえば東京オリンピックが間近に迫っていることもあり、拡大している傾向にある。そのため、サッカースパイク市場はこれから先十数年では拡大する可能性があるものの、その後の先行きはあまり芳しくないものと思われる。
Ⅲ.消費者動向分析
サッカースパイクを消費する選手たちを独自で調査(※3)した結果、サッカースパイクを消費することが多い中学生や高校生の部活動では土グランド環境下でのプレーが83%と最も多く、次いで人工芝環境下でのプレーが多いことが判明した。その他の年代ではプレー機会が週に2~3回程度という回答が多かったのに対し、中学生や高校生の回答はほぼ毎日部活動をするという回答が非常に多く、サッカースパイクを消費している主な層は中学生や高校生の部活生だということが明らかとなった。また、その部活生にサッカーシューズに求める機能性を調査したところ、複数回答方式では非常に多様な機能を求めていることが判明した。複数回答方式ではデザインやアッパーのフィット感、アッパーの柔らかさ、値段、カラー、商品独自の機能性、軽量性、ブランドといったものに票が分散しており、商品自体の質だけでなくデザインやカラーといった見た目もサッカースパイクを選ぶ際に重要な要素であると考えられているようだ。一方で単数回答方式ではまるで違う回答を得られた。商品の印象を左右するデザインやカラーには票が集まらず、アッパーのフィット感やアッパーの柔らかさに多く票が集まることとなった。このことから、アッパーのフィット感やアッパーの柔らかさがサッカースパイクを選ぶ際に一番重要視する要素であり、その二つの要素を満たすことのできる商品の中からさらにスパイクのデザインやカラー、軽量性や機能性、値段といったものを考慮して選んでいるのではないかと考える。
Ⅳ.マーケットシェア分析
同じくサッカースパイクを消費する選手たちを独自で調査し意見を集めたところ、国内マーケットシェアは図10のような形となる結果になった。NIKE社が32%とトップシェアを誇り、次いでADIDAS社が28%のシェアを獲得しており、世界でのマーケットシェアとそう変わらないNIKE、ADIDAS社の二強体制であることがわかる。ただ、それ以降は国内メーカーの健闘もありMIZUNO社が16%、PUMA社が9%、ASICS社が8%と続いている。この5社が国内でのシェアを大きく獲得しており、他ではUMBRO社が2%、UAが1%という程度にとどまっている。前述したサッカースパイク市場の行く末を考慮し、UAブランドの立ち位置を考察するのであれば負け犬、もしくは問題児と呼ばれるポジションに位置しており、UAのサッカースパイク事業は撤退すべき事業である可能性も否定できない状況である。しかし、UAブランドをインナーウェアのブランドとして終わらせずに総合スポーツ用品ブランドにまで育て上げるにはスポーツシューズ事業、サッカー用品事業はそうやすやすと切り捨てることのできない事業であり、厳しいシェア獲得競争にさらされる状況に身を置くしかなくなっている。
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