4.今後展開すべき戦略の考察
Ⅰ.商品について
3のⅠで述べたとおり、フリーリー2KJHGは現代のサッカースパイクとしては正統派であり、フィッティング、軽量性、対応するグランド等をみるに基本的な部分がしっかりとしている良質なサッカースパイクである。しかし、多少の差異はあれどもそのような正統派のサッカースパイクを国内シェア上位五社が販売していない訳はなく、価格面やデザイン面、知名度等によって差が開いている状況である。さらに価格面やデザイン面、知名度を改善しようにも改善後の国内サッカースパイク市場は行き先が不透明で、大金をつぎ込み続けるということは難しい状況である。そのため、この先部活動のサッカー選手の需要が高まると思われる人工芝での使用をメインに考えた、フリーリー2KJHGの良さを引き継いだモデルを上位五社より先に展開し、人工芝専用モデルはUAが素晴らしいという印象を与えることが必要なのではないかと考える。なお、その結論に至った根拠、及び人工芝メインのモデルに関する詳細な情報は後述する。まず、今回商品のターゲットを都市部周辺に住んでいる部活生に設定した。UA社の販売網は現在都市部周辺に限られている為、また部活生も地方より都市部周辺に集中しているためだ。その部活生らの周辺環境を調査したところ、人工芝グラウンドが他の地域に比べてかなり多いことが判明したのである。図の17を見ると、関東や関西といった都市部の多い地域には人工芝導入が積極的に行われていることがよくわかる。また、図の18からわかる通り、人工芝の導入は年々増加傾向にある。更に図の19からわかる通り、増設された人工芝の利用目的は主にサッカーであることがわかる。これらのデータから、都市部周辺に住む部活生は人工芝で日常的にプレーする機会が増えると考えた。そのため、メインで使用する環境を現在部活生がプレーする機会が一番多い土のグラウンドではなく人工芝のグラウンドに設定し、土のグラウンドにもそれなりに対応できるようなサッカースパイクが都市部の部活生には今後受け入れられるであろうと考えた。その人工芝であるが、土のグラウンドと人工芝のグラウンドとでは大きく特性が違うことがわかっている。第一にグラウンド表面の温度である。人工芝は土のグラウンドよりも熱をため込みやすい為、炎天下では60度前後にまで上昇する場合がある。そのため、人工芝でプレーする為のスパイクとしてはまずその熱に耐えられる耐熱性が必要である。また、その熱気のなかでプレーする選手の事を考慮すると、スパイク自体の通気性を上げる等の方法を用いた冷却機能が搭載されていることが望ましいと考えられる。次に人工芝特有の特性として、グラウンドの硬さ、引っ掛かりやすさが挙げられる。図の20のように、人工芝グラウンドは下地にコンクリートを敷き、その上に充填材や緩衝材、人工芝を敷く形をとっている。下地がコンクリートという硬い素材であるため、選手らの膝や足首、腰といった下肢部に負担がかかりやすいのが人工芝グラウンドでの大きな問題点である。また、土や天然芝のグラウンドではスパイクと地面とのグリップが強すぎる際に地面がめくれあがるといった方法で引っ掛かりすぎる事を自然に防止しているが、人工芝のグラウンドでは地面がめくれあがるような事は起きない為、過度に引っ掛かる事が発生しやすくなっている。この過度に引っ掛かる状況は方向転換や鋭く切り返す動作の時に選手の膝や足首、腰等に大きな負担をかけ、最悪の場合選手生命に関わる大怪我を引き起こす可能性がある。上記を踏まえて商品を考えるに、耐熱性や通気性、アウトソールやインソールの衝撃緩衝性、アウトソールの地面との摩擦係数を適度に減らすスタッド配置、更に部活生が重要視しているアッパーのフィット感や柔らかさといったものを考慮した商品になると考える。具体的に各改善点を考察すると、まずアッパー前足部の表皮には部活生が重要視しているアッパーのフィット感、柔らかさという二つの欲求を満たすために現在のフリーリー2KJHGと同じカンガルーレザーを採用することが好ましいと考える。カンガルーレザーは薄さ、軽さ、しなやかさを兼ね備え、使用することで使用者の足にすぐに馴染む性質があるからである。一方で使用していくうちに伸びすぎるという問題点もあることから、アッパー前足部には適度にステッチ(※4)を入れることが必要であると思われる。また、アッパー前足部の裏材には足当たりを心地よくする起毛素材に、中間層のクッション材等にはUA社独自の技術であるヒートギア、アーマーベント(※5)等のベンチレーションシステムを組み合わせた物を使用することで足馴染みと冷却機能を両立出来るだろうと考える。アッパー中足部にはカンガルーレザーよりもむしろマイクロファイバー素材といった人工皮革を採用し、大胆に通気孔を設けた設計にすることが良いのではないかと考えた。アッパー表面にパンチで開けたような穴を適度に作った構造にすることによってより通気性を高められれば、炎天下でのプレーでも快適さが失われないと考えたからだ。この穴開け加工によってアッパー中足部の耐久性が落ちる可能性があり、中足部のホールド性の確保がカンガルーレザーでは難しい可能性があるという理由から、柔軟すぎるカンガルーレザーではなく耐久性が高く適度に柔軟なマイクロファイバー素材を使用することが望ましいとも考えた。また、アッパー中足部は裏材と表皮を直接接合した2レイヤー構造(※6)にし、裏材には同じくヒートギアやアーマーベントといった技術を駆使したメッシュレイヤーを使用することがより通気性を高める上で必要なのではないかと考える。一方でアッパー後足部、ヒール部分は踵をホールドし保護するという重要な役割があるため、通気性を高める加工をすることは難しい。そのため、この部分は現行モデルであるフリーリー2KJHGとほぼ同様のフィット感に優れた構造、つまりヒールライニングには起毛素材とクッション材を採用し、ヒールにはヒールカップ構造を採用するといったことが良いと考える。インソールも現行のフリーリー2KJHGにも採用されているマイクロG4DFORM(※5)インソールを採用することで着地時の衝撃を和らげることが可能となり、下肢部への負担を減らせるであろうと考える。アウトソールには耐熱性、耐久性、耐磨耗性、軽量性、断熱性に優れた素材を使用し、地面との摩擦係数を適度に保ち、屈曲性、反発性に優れた構造を採用することが必要になると考える。素材に関しては耐磨耗性と軽量性を両立できる素材がサッカースパイクに使えるようなコストのものが基本的に無いため、二種類以上の樹脂素材を適切な場所に組み合わせる事が必要になるであろうと思われる。スタッドの形状には地面との摩擦係数を減らし、適度なグリップ力を保ちつつ突き上げも分散させる為の構造として多数円柱連結型スタッドを採用することが望ましいだろう。
コメント
とても詳細な考察で、趣味の域を超えてますね(笑)
記事中で気になったのが、人工芝導入施設の地域分布のグラフなのですがこのデータはどこで公表されているものでしょうか?
是非県別データなども見てみたいです!
さきほどのコメントですが、最後まで見たら早稲田大学大学院の資料が載ってましたね。
個人的には甲信越地方は非都市圏の3県にもかかわらず多いと思いました。
vacillateさん
趣味です、趣味笑
こういうことは記事にすると膨大になってしまうのであれですが、暇なときに考えていたりします笑
甲信越が多いのは、恐らく日照時間の少なさや雪による影響で天然芝の育ちが悪いor育てられないのが原因かと思います。